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「兵庫商社」を創った最後の幕臣
小栗上野介の生涯
昭和62年9月10日 第1刷発行 講談社〈絶版本〉

●本書は、わたしの、文字どおりのライフ・ワークである。最初に小栗にとりくんでから、かれこれ30年になるのではなかろうか。資料はあつまり、構想は練られたけれど、なかなか一冊の本にはならず、今日になってしまった。
 本書の約三分の二は、わたしの元気な間に執筆された。残りの三分の一は、肺ガンを病んで、痛みと苦しみのなかで、執筆された。東京女子医大病院中央病棟11階で、深夜ウンウンうなりながら、書きすすめられた。生きているうちに、何とか完成させたい、と思ったからである。途中、淋巴節その他への転移があり、絶望的ななかで、筆をすすめたこともある。
 もっと突込んで研究したい個所も何個所かある。会って話をききたかった人、資料を探しに旅行したかった場所など、結局、あきらめないわけにはいかなかった。また、理論面でも、たとえば、兵庫商社が日本最初の株式会社であゐことの立証などについては、さらに深く考えたいが、それをやれば、まだ2年や3年はかかるだろう。それまで生きているという保証はない。
                                        (著者の執筆メモより)

坂本藤良先生
坂本藤良(さかもとふじよし)
1926年(大正15年)東京生まれ。1951年、東京大学経済学部卒。同大学院特別研究生をへて、慶応義塾大学、立教大学、成蹊大学各講師、日本大学顧問教授、東急百貨店取締役、横浜商科短大副学長、日本経営政策学会理事長、日本ビジネススクール学長などを歴任。
1986年(昭和61年)9月、肺ガンで入院加療中の東京女子医大病院にて心不全のため死去、享年59歳。専攻は経営学。
著書は、ベストセラーになった『経営学入門』(光文社)のほか、『ビジネスのあゆみ』(文蘇春秋)、『岩崎弥太郎の独創経営』(講談社)、『坂本龍馬と海援隊』(講談社)ほか多数。

小栗上野介の生涯 目次
プロローグ 幻の楽譜
        幻の楽譜/オグロ・ブソゴ・ノカミ/アメリカ人技師のショック
        金と銀Iーなぜ日本の小判が大量に海外に流出したか
        メキシコの通貨を正式の政府通貨として承認した男の決断
        日本人がアメリカ人の教師となる日/英国女王もおよばぬ歓迎ぶり
        忘れられた小栗の偉業
〈PARTI〉
       誕生
「異国船無二念打払令(むにねんうちはらいれい)」とともに
        世界が一大転換をとげたとぎ/なぜスペインは没落したのか
        商社の源流/マンハッタン島を24ドルの品物と交換した男
        イギリス、オランダを駆逐す
        “自由の女神〃がニューヨーク港に建っている事情”
        世界に残された処女地、ニッポン/家斉の治世50年/イギリス船来航
        シーボルト事件
       生まれた家
        ―――――――― 家系、そして神田界隈
        遠 祖/「又一」命名由来/旗本としての小栗家
        生家の位置/神田川の清流/忠順と築地小劇場
       少年時代
        ―――――――― 塾生活と剣術修行
        あばた/安精良斎の塾/心友、栗本鋤雲
        直心影流−妙境に達した忠順の剣/剣のライバル、勝麟太郎
        変則剣法・小栗流と龍馬/ひとつのエピソード/アヘン戦争、天保の改革
       就 職
        初登城―黒船前夜/二五歳の若き“首相”のもとで
        就 職/世界史の転換−太平洋の時代へ
        日本とアメリカの新しい関係−黒船来航
       結 婚
 ―――――――― 小栗自身がつけた家計簿
        結婚、そして『家計簿』/側 室/ペリー来航
        先輩幕臣たちの群像/ペリー来航、父の死、そして家計簿
        神田祭の見物座席料に約五万円
       黒船と幕末政争
      ―――――――― 小柴の先輩官僚の群像と論争
        ロシアで出版直後に日本で邦訳された本/日本対ロシア、国境交渉史抄
        日米和親条約/幕末政争の対立点/ハリス対岩瀬忠震
        四面楚歌/井伊原弼の変貌/“安政の大獄”への前奏曲
〈PART2〉
       訪 米
        ―――――――― ライバル勝海舟
        使節任命/国書−むつびのちぎりのふみ/秘められた使命感
        護衛艦と勝海舟/ハワイー新聞社訪問
        サンフラソシスコでの再会−咸臨大の“神話”/旗印事件と祝砲事件
        通貨交渉前哨戦−−j造幣局視察/日の丸の“幕”荒野を走る
      オグロ・ブソゴ
 ――――――――アメリカの新聞に載った日本人評
        国書奉呈式のリハーサル/アメリカ側の見た儀式
        存在しない日付の「批准書」/勝海舟との混同/日本人の外観評、人間評
        オグロ・ブンゴ・ノカミ評/従者トミー
      帰 国
        幕末のアメリカ土産/j英国巨犬軍艦/風とともに去りぬ                       
        小栗の独白/小栗の従者の記録/船中建白書
        異様な雰囲気/さらばアメリカ/帰ってきた小栗
      露艦侵犯
 ―――――――― ロシア水兵、対馬に不法上陸
        将軍を殺しても外国人を殺すな―安藤信正の時代
        外国奉行・堀織部正の自殺/小栗の外国奉行就任とヒュースケン事件
        ロシア軍艦の対馬侵犯/ロシアの意図 ―太平洋/島民の抵抗、逃げ腰の領主
      挫 折
 ―――――――― 生命をかけた対露談判の失敗
        生命をかけた小栗の談判/安藤、勝の巧妙さ―毒を以て毒を制す
        小栗忠順の挫折/因縁の島、対馬
     無役の日々
 ―――――――― 対長州関係の転換
        鳥のまさに死なんとするや/幕政刷新/幕府の組織
        ふたたび無役/長州軍の敗走/幕府内部の力関係の変化
        歴史の皮肉
     洋式造船事始
        三本マストの洋式大型船−若き日の小栗の夢/ふたりの蘭学者の悲劇
        「技術模倣は神国日本の特技」/日本最初の万国旗図集/ジョン万、江戸へ
        象をつなぐ女性の髪の毛/密命―変装して黒船に乗りこむ
        利用されたロシア艦
     土蔵つき売家
 ―――――――― 日本の未来を考えた小栗の先見性
        オランダ造船技師との一問一答/栗瀬兵衛と翔鶴丸/小栗と栗本の出会い
        ドック建造の夢/フラソスヘの傾斜/ロ″シュの底意
        土蔵つなの売家/ヨコスカの選択
     横須賀製鉄所
 ―――――――― アジアにおける近代的工業の夜明け
        横須賀製鉄所建設計画の大綱/東洋一の大工場/小栗免職
        フランス兵とイギリス兵/日本初の近代的語学“専門学校”
        復 職/芝田日向守一行、パリヘ/ヴェルニーに二度驚く
        パリの日本人/イギリスの妨害/肥田浜五郎の反対論
        横須賀のフランス人/横須賀製鉄所の建設費用
     近代的マネジメソトの導入
        近代的マネジメント
        トップ・マネジメント機構の革新−交替制から責任権限の一元化へ
        組織および職務分掌/命令系統/部長織
        頭目(監督者)の役割/混用関係細則/日本最初の奨励給
        熟練工の採用と残業手当/“社内教育”事始に−日本人の独力運営へ日仏協力
        洋式簿記の導入/森林保護育成の意見書                              
        流通機構の近代化―姦商の独占利潤の排除
〈PART3〉
      第二次征長と日仏組合商法
        小栗の征長論/第一次征長の結末/第二次征長と兵庫開港問題
        小栗、海舟に極秘情報を打明ける/外国商人の貿易利益独占
        国益会所の構想/商社組織の伺書/国土を担保にしたか
      紙幣発行と三野村利左衛門
        無学文盲の大男/三井組と幕府の御用金/一石四鳥の名アイデア
        三井組の実力人事/〈江戸銀座札‐日本の兌換紙幣のはじまり
        朝廷・薩長側からの誘い/現体制は強力に見える/小栗への裏切り
      兵庫商社
 ―――――――― 日本最初の株式会社
        インフレと庶民の困窮/小栗の諸構想の集大成/兵庫商社設立の建議書
        コンペニー設立の出資手続/役員構成/武士、町人、百姓、誰でも出資を
        役員の追加
      江戸開城
        新時代への胎動/坂本龍馬の平和革命路線/小栗上野介の“大統領”構想
        慶喜の真意/西郷の武力革命路線/徳川家を丸裸にせよ
        君側の奸、薩摩を討て/諸外国の[局外中立」宣言
      最後の幕臣
        烏川河原での非道の斬首
        武士の美学/立往生した官軍/小栗の作戦計画
        江戸か枚ったものは西郷、勝ではない/非道の斬首
        無形の遺産
       兵庫商社・その後
 ―――――――― 三井銀行、三井物産の源流
        東京貿易商社―‐兵庫商社の再現/通商会社、為替会社‐兵庫商社の継承
        銀行設立の悲願/第一国立銀行の誕生/小野組の倒産
        三井銀行、三井物産の創設/明治の三ケチ
        日本最初の株式会社―その本質/現代の株式会社は有限責任か
        兵庫商社の意義
絶版本『小栗上野介の生涯』坂本藤良著

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